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連載 ‼ Marvin Lover. VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

連載 ‼ Marvin Lover. VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

 

60年代のマーヴィン・ゲイは、モータウンという巨大なヒット製造のシステムのうえにのったスターであり、60年代の黒人シンガーの多くがそうであったように(そして80年代以降の黒人シンガーのほとんどがそうであるように)、基本的には、与えられた素材に歌をのせる専業シンガーだった。

しかし彼は60年代後半あたりからそのヒット製造システムと自分の表現ということのあいだのギャップになやみはじめ、その一種の「ジレンマ」期である60年代後半に、ノーマン・ウィットフィールドが手がけた「I Heard It Through the Grapevine(邦題:悲しいうわさ)」のメガ・ヒットを軽く生んでしまうのが、天性のスターの恐ろしいところである・・・。

それをふまえると意外な話かもしれないが、ブルージーでファンキーな持ち味のノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングによって書かれたこの曲は没になること2回。初めてヒットしたヴァージョンは、そのわずか1年後に別の録音がよりヒットしたせいで影が霞んでしまったと言った、かなりの紆余曲折を経てきた。

現在、傑作として世界中の人に知られているのは、その2度目にヒットしたほうのヴァージョンである。

この曲の初録音は、1966年の夏、モータウンで吹き込まれた「Smokey Robinson & The Miracles(スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ)」のヴァージョンだった。しかしこれは発売すらされていない。


● I Heard It Through the Grapevine/Smokey Robinson & The Miracles


翌年の初めにはマーヴィン・ゲイが新しいアレンジで録音するが、こちらもお蔵入り ‼

その次にプロデューサーのノーマン・ホイットフィールドが組んだ相手は「グラディス・ナイト&ザ・ピップス」だった。これが大当たりとなった。


● I Heard It Through The Grapevine/Gladys Knight & The Pips (1967)

● I Heard It Through The Grapevine/Gladys Knight and the Pips (My Extended Version)


このアップ・テンポのヴァージョンは、グラディス・ナイトのゴスペル・ソウル・ヴォーカルのおかげで爽快な仕上がりとなり、1967年10月にはチャート入りし、R&Bチャートでは1位、ポップ・チャートでは2位にまで到達している。

この曲は、テンプテーションズやボビー・テイラーといった他のモータウンの歌手も吹き込んでいた。それでもノーマン・ホイットフィールドは、これを「マーヴィン・ゲイのヒット曲」にすることにこだわっていた。


● I Heard It Through The Grapevine/The Temptations


前述したように、最初にレコーディングしたのは、「Smokey Robinson & The Miracles(スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ)」だったが、シングルとして発売しなかった。続いてマーヴィン・ゲイがまずレコーディングし、続いてグラディス・ナイト&ザ・ピップスがレコーディングした。しかし、シングルリリースは、グラディス・ナイト&ザ・ピップスのヴァージョンが最初だった。

1968年の夏、この曲は既にグラディス・ナイト&ザ・ピップスのヴァージョンのヒットにより有名になっていた。またマーヴィン・ゲイもニュー・アルバム『In The Groove』用の曲を探していた。それゆえ「I Heard It Through The Grapevine」に再挑戦するのは理にかなった選択だった。

そうしてマーヴィン・ゲイとノーマン・ホイットフィールドは、激しい感情を胸に抱え込むような強烈なヴァージョンを作り上げ、やがてアルバムに収録されたこの曲をシカゴのラジオ局WVONが放送し始めると、問い合わせの電話が殺到。そうした反響に応えて、モータウンのベリー・ゴーディはこれをシングルで発売した。

1968年11月23日、「I Heard It Through The Grapevine」は全米ポップ・チャートに初登場し、この週にランク入りした曲の中では一番高い34位につけた。それからわずか3週でこの曲は1位にまで登り詰め、それまでモータウンが発売した曲の中で一番の大ヒット・シングルとなり、1969年3月には、全英チャートでも1位となっている。

それから45年後の2014年、イギリスITVのテレビ特番『I Heard It Through The Grapevine』では“イギリスで最も好まれているモータウンの曲”の投票で1位に選ばれ、イギリスのファンにとって特別な曲であることが改めて確認されたのは勿論のこと、ビルボード誌の集計において「マーヴィン・ゲイ最大のヒット曲」である。

by JELLYE ISHIDA.


『I Heard It Through The Grapevine』

Ooh, I bet you’re wondering how I knew
‘Bout you’re plans to make me blue
With some other guy that you knew before
Between the two of us guys
You know I love you more
It took me by surprise I must say
When I found out yesterday

ああ、ボクがどうしてそんなこと知ってるのか不思議だろう
君がボクを悲しくさせようとしてることを
昔付き合っていた男と一緒にね
この二人の男だったら
ボクの方が君を愛してるってわかるだろ
こんな驚かされたことなかったよ
それは昨日のことだったんだ

Don’t you know that
I heard it through the grapevine
Not much longer would you be mine
Oh I heard it through the grapevine
Oh and I’m just about to lose my mind
Honey, honey yeah

わからないかい?
いやな噂が耳に入ったんだ
君の心の中にもうボクはいないんだ
ああ、なんていやな噂を聞いたんだろ
ああ、ボクはどうしていいんだかわからないよ
ハニー、お願いだ

I know that a man ain’t supposed to cry
But these tears I can’t hold inside
Losin’ you would end my life you see
Cause you mean that much to me
You could have told me yourself
That you love someone else

男というのは簡単に泣いたりしないものなんだ
でも今のボクはあふれる涙を止められないよ
君を失うことは人生の終わりなんだ、わかるかい?
なぜなら君はボクにとってかけがえない人だから
君自身からボクに言ってくれればよかったのに
だれか他のヤツを愛してるということを

Instead I heard it through the grapevine
Not much longer would you be mine
Oh I heard it through the grapevine
Oh and I’m just about to lose my mind
Honey, honey yeah

ボクがいやな噂で知らなくちゃならないなんて
君の心の中にもうボクはいないんだ
ああ、なんていやな噂を聞いたんだろ
ああ、ボクはどうしていいんだかわからないよ
ハニー、お願いだ

People say believe half of what you see
Son, and none of what you hear
I can’t help bein’ confused
If it’s true please tell me dear
Do you plan to let me go
For the other guy you loved before

見たものを信じるのは半分くらいにしておけと人は言う
坊や、そして聞いた話は簡単に信じるなと
そんなこと言われたらわからなくなるじゃないか
もしそれが本当ならボクに前で証明してよ
君はボクを捨てようとしてるのかい
昔愛していた男のためにさ

Don’t you know
I heard it through the grapevine
Not much longer would you be mine
Oh I heard it through the grapevine
Oh and I’m just about to lose my mind
Honey, honey yeah

わからないかい?
いやな噂が耳に入ったんだ
君の心の中にもうボクはいないんだ
ああ、なんていやな噂を聞いたんだろ
ああ、ボクはどうしていいんだかわからないよ
ハニー、お願いだ

Honey, honey I know that you let me go
Said I heard it through the grapevine

ハニー、本当にボクを置いて行ってしまうんだね
なんていやな噂を聞いてしまったんだろう


● I Heard It Through The Grapevine/Marvin Gaye

● I Heard It Through The Grapevine (Live at Montreux)/Marvin Gaye


[ 連載 ‼ Marvin Lover. ]

 VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

 VOL.2:お蔵入りしたマーヴィン・ゲイの名曲『You’re The Man』

 VOL.3:マーヴィン・ゲイの『トーン(声)を自由自在に操る才能』

 VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

 VOL.5:Live At Oakland Coliseum, CA 1974

 VOL.6:単独で聴いては魅力が伝わらない ‼ 華麗なる曲『Mercy Mercy Me (The Ecology)』


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