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【特集】Lady Blackbird:VOL. 2 / 青い月の時に一度だけ、『Black Acid Soul』のような “ 叙情的作品 ” がやってくる ‼

【特集】Lady Blackbird:VOL. 2 / 青い月の時に一度だけ、『Black Acid Soul』のような “ 叙情的作品 ” がやってくる ‼


 
【 Black Acid Soul (2021) / All Original Songs 】

本題に入る前に、まずは「Lady Blackbird (レディ・ブラックバード)」のデビューアルバム『Black Acid Soul (2021) 』に収録されている11曲のトラックの内、7曲のカヴァーバージョンと【特集】Lady Blackbird:Vol.1 にて紹介した “ Fix It ” を除く、オリジナルの3曲 (内、1曲はInstrumental)を収録した『Black Acid Soul (2021) / All Original Songs』を是非ともお聴き頂きたい
 


● Black Acid Soul (2021) / All Original Songs

00:00 ▶ Opening:Black Acid Soul
01:00 1. Nobody’s Sweetheart
04:38 2. Five Feet Tall
07:55 3. Black Acid Soul [ Instrumental ]

#blackacidsoul

特にオリジナル曲においては、彼女自身が「クラシックで時代を超越した作品を、できる限り最高の方法で作りたかった」と語った通り、名目上はジャズのバックグラウンドを持つこのアルバムが、ジャンルに属するのではなく、『さまざまなジャンルがどこで出会い、彼女の歌によって如何に集約され、彼女の声を本当の意味で披露するために設計された作品であるか』を物語っている

 


 
【 青い月の時に一度だけ、 “ 叙情的作品 ” がやってくる ‼ 】

まさに「Once in a Blue Moon」…青い月の時に一度だけ、『Black Acid Soul (2021年9月3日)』のような “ 叙情的作品 ” がやってくる

それらは、「哀愁であっても気軽に哀愁とは呼べない深い情緒を伴い、胸が締め付けられるような切なさを超えた深い感動」をもたらす・・・。
 

【 Lady Blackbird – Debut Album:Black Acid Soul (2021) 】

・発売日:オリジナル盤 (2021年9月3日) / 国内輸入盤CD・LP (2022年01月28日)
・録音:2020/2021
・スタジオ:サンセットサウンド(スタジオB),LA
・レーベル:Fondation Music / BMG
・フォーマット:LP、CD、ダウンロード
・ジャンル:ジャズ
・スタイル:コンテンポラリージャズボーカル/レトロソウル
・タイトル(番号):11
・長さ:41:53

[ Musicians ]
・ボーカル:Lady Blackbird (レディ・ブラックバード)
・ギター:Chris Seefried (クリス・シーフリード)
・ピアノ、メロトロン、シンセサイザー:Deron Johnson (デロン・ジョンソン)
・ダブルベース:Jon Flaugher (ジョン・フローター)
・ドラム:Jimmy Paxson (ジミー・パクソン)
・トランペット:Troy Andrews (トロイ・アンドリュース)

[ Track list ]
01. Blackbird – Nina Simone (1963)
02. It’s Not That Easy – Reuben Bell with The Casanovas (1967)
03. Fix It – Bill Evans/原曲:Peace Piece (1958)/Chris Seefried, Marley Munroe (オリジナル歌詞とボーカル)
04. Ruler Of My Heart – Irma Thomas (1963)
05. Nobody’s Sweetheart – Chris Seefried (オリジナル)
06. Collage – James Gang (1969)
07. Five Feet Tall – Chris Seefried, Marley Munroe (オリジナル)
08. Lost And Looking – Sam Cooke (1963)
09. It’ll Never Happen Again – Tim Hardin (1966)
10. Beware the Stranger – Voices of East Harlem/原曲:Wanted, Dead or Alive (1973)
11. Black Acid Soul – Chris Seefried, Deron Johnson, Jimmy Paxson, Jon Flaugher*, Marley Munroe (オリジナル)


 
前回は確かに同じレトロなブラケットで、15年前 (2006年10月27日) に本国イギリスで大変な興奮を巻き起こし、その圧倒的な人気はアメリカのレコード業界も見過ごせないものになった『Amy Winehouse (エイミー・ワインハウス)』「Back to Black (2nd Album)」であった
 

【 Amy Winehouse – 2nd Album:Back to Black (2006) 】

Island Records (アイランド・レコード) からリリースした2枚目で最後のスタジオ・アルバム『Back to Black (2006)』は、ほとんどの曲を「Amy Winehouse (エイミー・ワインハウス)」が単独で作曲した作品である

その作品内容は、2003年にミュージックビデオセットのアシスタントだった、当時の元ボーイフレンドで将来の夫「ブレイク・フィールダー = シビル」との激動の関係に基づいている。

ブレイクが一時的に以前の元ガールフレンドを再び追いかけるために彼女のもとを去り、その短命の別居が、「罪悪感、悲しみ、不倫、失恋、そして二人の関係におけるトラウマ (心痛)」に対するテーマを探求するアルバム『Back to Black』を作成するよう彼女に拍車をかけた・・・。

曲調においては、1960年代のガールズグループのポップスやソウルミュージックの影響を受け、彼女はプロデューサーの 「Salaam Remi (サラーム・レミ)」や「Mark Ronson (マーク・ロンソン)」、「Sharon Jones’ (シャロン・ジョーンズ)」のバンド『The Dap-Kings (ザ・ダップ・キングス)』とコラボレーションし、当時のサウンドを現代のR&Bやネオソウルとブレンドしたサウンドを表現した。

そして、2006年にリリースされた2枚目のアルバム『Back to Black』は音楽評論家から絶賛され、エイミー・ワインハウスのソングライティングと感情的な歌唱スタイル、そしてレミとロンソンのプロデュースを世界中が称賛した。

このアルバムからは、“ Rehab ”、“ You Know I’m No Good ”、“ Back to Black ”、“ Tears Dry on Their Own ”、“ Love Is a Lost Game ”の5枚のシングルを生み出した。

また、2000年代後半を通じてブリティッシュ・ソウルの広範な人気に重要な影響を与え、 「Adele (アデル)」、「Duffy (ダッフィー)」、「Estelle (エステル)」などのアーティストの音楽的景観を開いたとも言われてる・・・。

2008年の「Grammy Awards (グラミー賞)」では、『Back to Black』が“ 最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞 ”を受賞し、“ アルバム・オブ・ザ・イヤー ”にもノミネートされた。同じ式典で、エイミー・ワインハウスはさらに4つの賞を受賞し、1回の授賞式で2番目に多くの賞を女性として受賞した。

またこのアルバムは、2007年の「Brit Awards (ブリット・アワード)」の“ マスターカード・ブリティッシュ・アルバム ”にもノミネートされ、2007年の「Mercury Prize (マーキュリー賞)」にもノミネートされた。

そして、アイランド・レコード からリリースした2枚目で最後のスタジオ・アルバム『Back to Black』は、イギリス国内だけで358万枚を売り上げ、『21世紀2番目に売れたアルバム』となったのだ・・・。

今は亡きエイミー・ワインハウスのアルバムは世界中で1600万枚以上を売り上げ、文字通りに太く短い27年間の生涯で残した彼女の音楽は、清濁両方の無類の生命を与え続けた歳月の何倍もの長期に渡って、その『剥き出しの魂』と共に今後も人々の心を強くとらえ続けるだろう


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その14年前 (1992年11月1日) には、衝撃的なヌード・ジャケットで話題を呼んだ、彫刻のように美しい女性ヴォーカリスト「Sade Adu (シャーデー・アデュ)」のイメージを前面に打ち出したUKバンドグループ『SADE (シャーデー)』が、“ 美学の頂点を極めた作品 ”「Love Deluxe (4th Album)」であった
 

【 SADE – 4th Album:Love Deluxe (1992) 】

彫刻のように美しい女性ヴォーカリスト、「Sade Adu (シャーデー・アデュ)」のイメージを前面に打ち出したUKのバンドグループ『SADE (シャーデー)』。ジャジーなムードを漂わせたアルバム『Diamond Life』でデビューし、アデュの華やかなルックスも手伝い、瞬く間に世界的人気を得て大成功を収めた

1984年のシャーデーの登場は世界の音楽シーンに大きなインパクトを与え、言うまでもなく、それまでのブリットソウル(UKソウル)でも、単純なアダルト・コンテンポラリーと言った類の音楽ではない。

非常に洗練された大人のポピュラーミュージックでありながら、若者たちにも「新しい音楽」として受け入れられるという、これだけアダルトな世界感を持ちながらも老若男女に享受される稀有な存在である・・・。

1992年にリリースされ、衝撃的なヌード・ジャケットで話題を呼んだ彼らの4枚目のアルバム『Love Deluxe』は、これまでシルキーなジャズとソウルをミックスしたサウンドが売りであったものから、そのカテゴリーを飛び出し、「シャーデーの世界観の頂点」ともいえる透明感溢れる上質なポップスを作り上げている。

シャーデー・アデュも洗練さを増し、この作品では神々しさと同時に近未来的なメタリックさも漂わせ、ヒットした“Kiss of Life”では、「マーヴィン・ゲイの“Let’s Get It On”をより上品に磨き上げてポップスにした」と語っており、当時のポップス・ファンとソウル・ファンの両方に絶賛された。

また、リズムの引用も複雑になり、一曲の中にジャズ、ソウル、ラテン、レゲエ、アンビエント、デジタルなビートが絶妙なミックスで配合されているが、どの要素も極端には前面に出ていないので、古さ(時代性)をあまり感じさせない恍惚感もある。

本作のリリース後、バンドは7年間の活動休止期間を過ごし、その間、シャーデー・アデュはうつ病と依存症の噂でメディアの監視下に置かれ、後に最初の子供を出産した・・・。

これまでリリースした6枚のアルバムの中でも、一曲一曲が洗練され最高傑作として名高い4thアルバム『Love Deluxe (全9曲)』は、一度耳にしたら忘れられない名盤中の名盤であり、30年もの時を経た今日においても決して色褪せることはない


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Once in a Blue Moon(ワンス・イン・ア・ブルームーン)…「青い月の時に一度だけ」とは、文字通りの「青く見える月」ではなく、「ごく稀に」「滅多に起こらないこと」を表現してのことである

つまり、『叙情的な作品 (叙情の旋律・叙情的な曲)』という表現にも、悲しみ、哀愁、切なさという表現とは若干異なる、そういった単体の感情を超越した意識下にあるさまざまな感情が入り乱れた、胸に訴え掛ける『直情的な作品』を意味している・・・。

前回の【特集】Lady Blackbird:Vol.1 にて紹介した『Lady Blackbird (レディ・ブラックバード)』の “ Fix It ” も、その代表曲と言える
 


● Lady Blackbird – Fix It

00:00 ▶ Opening:Black Acid Soul [Instrumental]
01:30 1. Lady Blackbird – Fix It [ 原曲:Bill Evans – Peace Piece (1958) ]

#blackacidsoul
 

【 ジャズ・ピアニスト『Bill Evans』の楽曲 “ Peace Piece ” 】

再度 “ Fix It ” を解説すると、原曲はジャズ・ピアニスト「Bill Evans(ビル・エヴァンス)」が、1958年に2ndアルバム『Everybody Digs Bill Evans (1959)』のために録音した、リハーサルなしのモーダル・ジャズ・コンポジション “ Peace Piece ” であり、そのインストルメンタル曲に “ Fix It ” と呼ばれるトーン詩に変換された歌詞とボーカルを追加したカヴァー曲である

しかし、その新しいメロディーと言葉がコントラファクトのように “ Peace Piece ” の上に置かれることにより、聴き手の気分を一段とシリアスにさせる・・・。

 
今世紀において、哀愁であっても気軽に哀愁とは呼べない深い情緒が伴う “ Fix It ” は、彼女とそのサウンドをギタリストとしても支えるプロデューサー『Chris Seefried (クリス・シーフリード)』の「美しい叙情的楽曲」の一つとして変容を遂げ、もはや『オリジナルと言ってもよい楽曲として世界的に広く認知されて行く』ことであろう・・・
 


 
【 投 稿 後 記 】

【特集】Lady Blackbird:Vol. 2 の後記として、私が常々心掛けている「論考や批評に対する概念」と共に、今回の投稿で一番に伝えたかった “ 愛すべき究極のディーヴァ (歌姫) ” について叙述しておきたい。
 

まずもって、思いは伝わらなくては意味がないし、価値も生じない。主義・思想・哲学・イデオロギー、それに芸術的批評など、読者に伝えるべきは「テーマ性」などではない。ひとりよがりな思いだけが先だったコミュニケーションは、たいてい全体主義的「ファシズム」になる。どんな御大層な思想も、伝えられなければ価値はなく、思いは他者に伝わってこそ、はじめて意味あるものになる。書き手が伝えるべきは、「テーマ」ではなく、『コンテクスト』である

 


 
【 My beloved ultimate diva / 私の愛すべき究極のディーヴァ (歌姫) 】

『Diva (ディーヴァ)』…この言葉が英語に入ってきたのは19世紀後半であった。元々はイタリア語の名詞で「女神」を意味する「diva」に由来する。

ディーヴァは『成功した女性歌手』、特にオペラ界で卓越した存在となっている者を指す表現で、広くは、演劇、映画、ポピュラー音楽などの分野にも拡張して用いられている。

しかし、現代において「ディーヴァ」は時に、『気まぐれで気難しいと評判の女性』を指す表現としても用いられる。

ショー・ビジネスの世界では、「Diva attitude(ディーヴァ・アティテュード / ディーヴァのような振る舞い)」という言い回しで、自尊心が強く、一緒に働くのが厄介な人物のことを意味する場合がある・・・。

いずれにせよ、私にとって “ 愛すべき究極のディーヴァ (歌姫) ” とは…「Coolness diva (クールネス・ディーヴァ)」『Sade Adu (シャーデー・アデュ)』であり、今は亡き「Darkness diva (ダークネス・ディーヴァ」『Amy Winehouse (エイミー・ワインハウス)』なのである。

言い換えれば、音楽性や精神性を含め、その行動や表現活動において、シャーデーが『孤高の象徴』であり、エイミーが『孤独の象徴』と言えよう

しかし、「粋(いき)」と「無粋(ぶすい)」、「Sophisticated (ソフィスティケイテッド/洗練さ)」と「Complex (コンプレックス/複雑さ)」の両義性を二人ともが持ち合わせ、『どちらかを表に出しつつ秘めている』…その中に、ある種の官能的で浮遊感覚あふれるボーカルテイストがあり、聴き手の耳をそば立たせ、ハートをとらえてしまう強いサムシング…つまり『自己の世界を確実に創り上げている』・・・。

また彼女らは決定的に、「白人文化におもねらない」だけでなく「黒人音楽に媚びない」姿勢が共通しながらも、世間一般ではその音楽ジャンルやカテゴリー、あるいはアートフォームのみで評価・評論をされがちでもある。

彼女らの紡ぎ出す歌詞と楽曲が、そのメロディーラインとリズム、アンサンブルやグルーヴ感を包摂・統合・抱擁するがごときランスルーする中に、『かつての音楽ルーツの懐かしさ』が如実に表れているのは間違いないだろう。

しかしそれは、かつての時代に生み出されたものの焼き直しではない『永遠のスピリットとも言える音楽性』を見事に表現し、体現している。

シャーデー・アデュとエイミー・ワインハウスの両者は、そのスピリットを独自の語り口で、またドラマ性の面白さを現代において発揮している “ 愛すべき究極のディーヴァ (歌姫) ” そのものなのだ

そのような「Context (コンテクスト/文脈や背景、前後関係のことを指す)」において、『Lady Blackbird (レディ・ブラックバード)』を新たな “ 究極のディーヴァの一人 ” として私自身は位置づけている・・・。

そして今般、クールネス・ディーヴァの「シャーデー・アデュ」、そしてダークネス・ディーヴァの「エイミー・ワインハウス」に次ぐ、私にとって三人目の “ 愛すべき究極のディーヴァ (歌姫) ” に名を連ねる『Lady Blackbird (レディ・ブラックバード)』に呼び名を与えるならば… “ 勇敢にも世界的なジャズシーンに火をつける『Fearless diva (フィアレス・ディーヴァ/大胆不敵な歌姫)』” と呼ぶことが、彼女にもっとも相応しいのではないだろうか

by JELLYE ISHIDA.
 


●【特集】Lady Blackbird

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