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『芸術の物語』:序 章

『芸術の物語』:序 章


 

【『芸術』という概念 】
 

今日われわれが普通に使用している『芸術』という概念は、もともと西洋の近代社会において成立した概念である。

近代の市民国家(西欧における啓蒙主義の勃興)においては、新しい理性的な宗教が求められ、その拠り所となったのは「アルス ( 科学、技術、芸術 ) 」であった。

イギリスやフランスではこのうち、特に 「科学と技術」が価値付けられ、一方、ドイツでは「芸術」が価値付けられた。

特に、近代ドイツでは以後、「芸術」が新たなる宗教的な位置にまで価値付けられていくことになったのである。

※「Ars(アルス)」ラテン語:「術」の意味。手段、方法、手立て。「啓蒙」とは、「蒙(無知蒙昧の蒙。物事に暗いこと)」を「啓(ひら)く」ことで、無知を有知にする意味。啓蒙思想(主義)とは、神、理性、自然、人間に関する観念が一つの世界観に統合され、多くの賛同者を得て、芸術、哲学、政治に革命的な発展をもたらした 17~18世紀のヨーロッパの思想運動。人間の可能性は、正しい「理性」によって切り開かれるもので、そこにこそ真実の認識と人類の幸福とを得ることができるという確信に貫かれていた。

 


 

【 すべての芸術は音楽の状態を憧れる 】
 

新たなる神として位置づけられた「芸術」は、超越的であり、人間の世界から隔絶された、普遍なる存在であることが求められ、ここにおいて「芸術の自律性」が問われるようになったのである。

音楽でのベートーヴェンは、このような芸術を具現化しうる「天才」として代表的な存在となり、芸術は自律化の道を辿り、その規範は「音楽」に求められることになる。

※「ウォルター・ペイター (文学者、批評家) 1877年」:音楽は外界の模倣に表現が依存せず、たとえば器楽曲のように、人間の世界を超越するかのように、作品自らの形式のうちに逐次に内容を表現しうる表現とみたため。

 


 

【 芸術とはどこにあるのか 】
 

西欧における啓蒙主義の勃興に伴い、芸術の意味と、その性質に関して、二つの主要な理論が優勢となり、現在でも大きな影響力を発揮している。

この二つの理論が、17世紀から18世紀にその運動を開始した「合理性」と「ロマンティシズム」という流れから派生していることは、驚くべきことではない。それが芸術の分野に変換されたとき、それは「形式主義(フォーマリズム)」、そして「表現主義(合理主義とロマン主義)」と知られる流れになった。

そして、ここでの問題は、「いったい芸術とは何か?」というよりはむしろ、『芸術とはどこにあるのか?』という問いに変わっていったのである・・・。

では、『芸術の物語』を是非ともご覧頂こう。(つづく)

 
by JELLYE ISHIDA.

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