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連載 ‼ Marvin Lover. VOL.2:お蔵入りしたマーヴィン・ゲイの名曲『You’re The Man』

マーヴィン・ゲイのファルセット・ヴォイスに、ファンクネス溢れるリズムがクールなメロウ・ファンク・ナンバー“ You’re The Man ”。

マーヴィンの歌唱法は、60年代のストレートなシャウト型から、1971年1月、シングル「ホワッツ・ゴーイン・オン」を発表後、この曲の成功を受けて同年5月に同名のアルバム『What’s Going On』発表頃からファルセットを多くまじえ、緩急をつけたスタイルに変化した。

全編をファルセットで通した初めての曲“ Inner City Blues ”ではじまったファルセットの多用は、“ You’re The Man ”をはじめ、翌年の“ Trouble Man ”以降、特に顕著となって、いわゆるスウィート・ソウルの源流になったとも言える。

名盤「What’s Going On」の商業的成功に気をよくしたマーヴィンは、すぐさま次のアルバムの制作に取り掛かり、つづく発売予定だったアルバムから“ You’re The Man ”を先行シングルとして1972年4月にリリースした。

しかし、これが全くヒットせず、そのアルバム制作は頓挫してお蔵入りし、結果的にシングル盤(45s)のみが残されたという、今では貴重なマーヴィン・ゲイの一曲である…‼


・You’re The Man Part.1(Single Version/Tamla-45 RPM 1972)


・You’re The Man Part.2(Single Version/Tamla-45 RPM 1972)


・You’re The Man Part.1&2 Mix(Single Version)


確かに、“You’re the man”-[米国大統領選挙運動が始まったときの政治的な非行動に対する浸透していた皮肉の意]-は、歴史的名盤『What’s Going On』の後、約1年後にEPとして1972年春にリリースされ、全米チャート50位、R&Bチャート7位と大ヒット(クロスオーバー・ヒット)に至らなかった。

しかし、特筆すべき重要なことは…、マーヴィン・ゲイのディスコグラフィーでの説明では一般的によく語られている、1971年の傑作『What’s Going On』、そして1973年の傑作『Let’s Get It On』と言う“音楽史に残る名盤” 2枚の間に発表されるはずだったアルバムと言われているが、実際には元々、『What’s Going On』に先行されて企画されていたアルバムこそが『You’re The Man』なのである…‼

また、当時のソウル・ミュージックは、マーヴィン・ゲイを筆頭に「Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)」、「Curtis Mayfield(カーティス・メイフィールド)」「Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)」らによるニュー・ソウルが台頭した時代であり、70年代初頭の音楽背景(60年代後半期から)には、実に「革新的な音楽的動向(あるいは胎動)」が伺える。

その一例として、70年代初頭のジャズの周りでは、社会の矛盾を突いた自らの詩を音楽にのせ、当時“黒いボブ・ディラン”と呼ばれた音楽家で詩人の「Gil Scott-Heron(ギル・スコット・ヘロン)」が、70年代ジャズの名門「フライング・ダッチマン」からデビュー(1970年)した。


その当時、ジャズとファンクを融合させた音楽を生み出し、その独自性はアシッドジャズやレア・グルーヴなど、ジャズとファンクの間を自在に行き来するサウンドで数多くのクラシックを残してきた「Roy Ayers(ロイ・エアーズ)」がUbiquity(ユビキティ)を結成。現在も精力的にレコーディング、ライブツアーをこなしており、現在もHIPHOP世代からもサンプリング・ソース(ネタ元)として多大な支持を集める。


そして、ジャズの巨人「Miles Davis(マイルス・デイヴィス)」はフュージョンと呼ばれるジャンルを確立し、ジャズ史上最も革命的な作品の一つとみなされている1970年に発表した2枚組のアルバム『Bitches Brew』をリリースした時期でもあり、マイルスのアルバムとしては初めて、本国アメリカでゴールド・ディスクに達した。本作は、“ウッドストック・フェスティヴァル”の開催日に、マイルス・デイビスがニューヨークのスタジオで繰り広げたサウンドを収めたアルバムで、ロックやファンクの要素を大きく取り入れた「エレクトリック・マイルスの金字塔」にして、20世紀音楽の黙示録というべきベスト・セラー作品でグラミー賞受賞作でもある。


また、「ストラタ・イースト」や「ブラック・ジャズ」といった、黒人たちによるインディペンデントレーベルが生まれ、ジャズがファンクやアフリカ音楽と接近していった時代でもあった…。

特に私自身の記憶の中で、印象に残るあるインタビューでの言葉が思い出される・・・。

「プライベートではマーヴィン・ゲイを好んで聴いている。ビリー・ホリディがそうだったように、マーヴィン・ゲイには楽器のように声をコントロールできる才能がある・・・」と述べたのは、偉大なるジャズ・ジャイアンツ「マイルス・デイヴィス」である…‼

FRANCE – CIRCA 1964: Miles Davis in Paris, France in 1964 – Miles Davis, Jazzman, Pleyel Hall. (Photo by Herve GLOAGUEN/Gamma-Rapho via Getty Images)

 

 
そんな名曲 “ You’re The Man ” のシングル盤オリジナルは、「シングルA面:You’re The Man Part.1 とB面:Part.2」ヴァージョンのほかに、ファルセット歌唱による別ヴァージョン「Alternate Version 1」とファルセット歌唱でないヴァージョン「Alternate Version 2」が存在する。

by JEIIYE ISHIDA.


・You’re The Man(Alternate Version 1)


・You’re The Man(Alternate Version 2)


[ 連載 ‼ Marvin Lover. ]

 VOL.1:Inner City Blues/インナーシティ・ブルース(都市のブルース)

 VOL.2:お蔵入りしたマーヴィン・ゲイの名曲『You’re The Man』

 VOL.3:マーヴィン・ゲイの『トーン(声)を自由自在に操る才能』

 VOL.4:ビルボード誌の集計においてマーヴィン・ゲイ最大のヒット曲 “ I Heard It Through the Grapevine ”(邦題:悲しいうわさ)/ Single Cover,1968

 VOL.5:Live At Oakland Coliseum, CA 1974

 VOL.6:単独で聴いては魅力が伝わらない ‼ 華麗なる曲『Mercy Mercy Me (The Ecology)』


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